人生の大逆転
教会の書棚に古いトラクト(1938年発行)を見つけました。それは、あるアルコール依存症男性の救いの自叙伝です。
タイトルは「恩寵に酔う34年」副題「酒呑み酒井悔改談」です。
酒飲みの両親のもとに生まれた酒井助作さんは幼くして酒の味を覚え、その上、酒に強かったためアルコール依存症になってしまいました。
人間破壊をもたらすアルコールを何度もやめようと努力しましたが、成功せず、49年間酒漬けの日々を過ごしました。
明治38年11月14日、当時東京芝に住んでいましたが、向かいの大工 小林氏から、自宅で夜、聖書学院校長の中田重治師の集会があるからと熱心に誘われ、義理もあり一杯機嫌で出席しました。
説教題は「時は満てり神の国は近づけり汝ら悔い改めて福音を信ぜよ」でした。この福音を信じれば飲酒の悪癖から救われるかもしれないとの希望が出てきました。
実際、小林氏も大酒飲みでしたが、最近は小林氏の裏口に貧乏徳利の行列が無くなっていることも知っていました。
説教後、中田師はエペソ 5章18節、Iヨハネ 1章9節を引照して個人的に話をしてくださり、信じることを勧められました。
今までいくつかの神様を信じたり、様々な断酒方法を試しましたが、ことごとく失敗し、今ここでキリストを信じても無理ではないかとの思いもあり、10数分間考え込みました。
アルコールの幻覚から自殺の寸前に助けられたこともあり、一度は死んだ身であるから、神様に委ねて死んでも良いのではないかと思い、決心をし、腹を決めて叫びました。
「神よ我を助け給え、我は不忠不孝の罪人なり我を赦し給え我を助け給え」。その場に倒れ伏してしまいました。中田師は頭に手を置き祈られました。自分も祈りました。
そして起ち上がってみましたら、周りは新天新地のようであり気分は全く爽快でした。真の罪の赦しを経験しました。
意気揚々と帰宅し、妻に話しましたが、妻はまた始まったと信じませんでした。
翌日の夕方、いつものように妻は晩酌の用意をしましたが、徳利には手を付けず、妻に「今日より酒用なし」と言いました。妻は信ぜず、無理しないようにと勧めてきました。その翌日もその次の日も飲もうとせず、それが続いたため、妻は不思議と思いましたが、やがて喜びに変わりました。
酒井家は幸せな家庭となり、酒井兄は福音を人々に語ることが第一の仕事になりました。
それは82歳で召天されるまで続けられました。
召天の前夜、自宅で枕元に近親の方々を集め、テモテⅡ 4章7~8節を読ませ、自分の使命が終わること、またIテサロニケ 4章13節以下を読ませて、甦りの希望を、Ⅱコリント 5章 1~3、ルカ 16章19節以下を読ませて天国のことを話され、励まされたそうです。(戸川)